『土を喰う日々―わが精進十二ヵ月』水上 勉 (著)
軽井沢での一年間の食生活を綴ったエッセイ。なるほど食事とは人生の一大事である。
特に印象に残ったレシピ
くわいを焼くのは、この頃からのぼくのレパートリーだった。のちに、還俗して、八百屋の店頭に、くわいが山もりされ、都会人には敬遠されるとみえ、ひからびているのを見ると涙が出たが、一般には煮ころがしか、あるいは炊きあわせにしかされないこれを、ぼくは、よく洗って、七輪にもち焼き網をおいて焼いたのだった。まるごと焼くのだ。
くわいを丸ごと焼き網に乗せ、ぷしゅっと筋が入った亀裂から、湯気とともにただようまで、気ながに焼く。そして、塩をつけて食す!
塩をつけて食す!・・・!