
『夜の果てへの旅』セリーヌ(著)、生田 耕作(訳)
闇の中に存在する快楽が、陰惨に鬱蒼と、無感情に綴られていた。いや、文体としては主人公の感情の吐露が主軸なので実に感情的には書かれているのだけど。
絶望と嫌悪感、この本にはまったく救いがない。困った。
困ったと思いながら、詠む手が止まらない。空しく読書をしながら駅につき、会社についたらついたで本の世界の方が空しくないんだから、これはいったいどうしたものかと。自分の中の偽善に嘘をついても仕方がないな、と読後は妙にさっぱりとした。
雇主というものは使用人の恥辱によっていささか安心を得ているものだ。奴隷は必ずいくらか、いや大いに、軽蔑に値する人間でなくちゃならぬ。精神面および肉体面のこまごました慢性的欠陥の総合が奴隷の過酷な運命を正当化する。それでこそ地球は順調に回転できるのだ、めいめいが自分にふさわしい席の上に乗っかっていることになって。
人間の汚さについて全真実が語られたとき、われわれはいまより幾分か自由になれる
そう。偽善を捨てると、幾分か楽になれるんです。