人間というものは、不幸のほうだけを並べ立てて、幸福のほうは数えようとしないものなんだ。
世界なんか破滅したって、ぼくがいつもお茶を飲めれば、それでいいのさ。
人間てものは、生涯にせいぜい一度くらいしか、こんなに本心をさらけだすことはないものなのさ、それもヒステリーの発作にでもかからなければね!
彼女の行手にあるけがれがどんなに醜悪なものであっても、屈辱は彼女を高め、浄めてくれるだろう・・・憎悪によって・・・ふむ・・・あるいは赦しの気持ちによってだ・・・だが、それにしても、そのために彼女が楽になれるものだろうか?
ぼくらは、人間であることをさえわずらわしく思っている。ほんものの、自分固有の肉体と血をもった人間であることをさえだ。
苦痛が快楽になっていく情景がありありと描かれていた。心に徹底的にメスを入れていく快感。
この人の本は、本当に夢中になってしまう。まるで死産児の僕ら。