『流れる星は生きている』
藤原 てい (著)
もう読み終えて2週間ほどになるのだけれど。
そしてこの本自体は3時間もあれば読了できてしまうほどの分量しかないのだけど。
食料のない状態で満州から引き揚げる母子の姿が、何度も何度も目の前に浮かび上がってくる。一歳にも満たない状態で、まともな水も食料もなく、母乳もなく(母も食べていないので母乳が作り出されない)、声も出さず泣き声もあげず、それでも生き続けている赤ん坊。栄養失調が第三期に入り、お腹がせりだした状態で下痢が止まらない息子たち。着替える衣服もなく、全身から異臭が漂い、裸足で野山を歩き続けたため膝から下は真っ赤に腫れ、日本に戻って鏡を見ると、そこには幽霊がうつっていて。
私が、産後一か月の体で、新生児と3歳と6歳の男の子の3人を連れて逃げろと言われたら?
でも逃げるしかない。生き続けられるだろうか。乞食になり、幽霊になり、それでも生き続けたいだろうか。ラストの「これで死んでしまってもいいんだ」が、子供への全身全霊をかけた祈りが胸を打つ。
悲惨な満州からの引き上げ記録。この家族だけじゃないんだよね。
戦地からの引き上げ、
アウシュビッツでの毎日、
いやおうなしに極限を体験させられ、
壮絶な状況を生き残った人たちの残りの人生って、どんなものなんだろう。
「夜と霧」、読まなきゃ。
セニョールさんのおすすめなら私も読むー
『流れる星は生きている』
先日読了しました。
お盆が近いこの時期、なんだかノスタルジー加減もピッタリ。
小学生の頃って夏休みに必ず戦争の頃の本が課題図書になりませんでした?
なんだかあーいうのが必要だったんだなと、今になって思うわけです。
どうして現代の日本にはこれだけ食べ物もモノも溢れているのに、
生きていればなんとかなるのに、
自分の命を絶ったり、親が子を殺したりできるのか。
藤原さんの記録を読んでそんなことを考えました。
うちの次男はすごい食いしん坊なので、
藤原さんの次男君がひもじい思いをしているくだりは、
文字を追うのに詰まりました。
「家族」という随筆には、成長した彼らの後日談がチラッと出てきます。
裸足で38度線を越えた藤原さんの足、
次男君の足。
戦争は、心にも、体にも、
消えることのない傷を残します。